Quick Homepage Maker is easy, simple, pretty Website Building System

慶応大学法学部論述試験

慶應大学法学部論述試験

慶応大学法学部論述力試験に「憲法」が出題される理由

今年の慶応大学法学部の論述力試験は憲法(統治)に関する出題でしたね。課題文を要約した上で論じるテーマも、「内閣総理大臣のリーダーシップのあり方」という前年度までの傾向と違い具体的な内容に変わりました。ただし、与えられた課題文は、わが国の内閣発足時の内閣制度が抱える問題点について述べられたもので、受験生には不慣れで読みにくい内容だったのではないでしょうか。
まず、課題文を解読した上で、答案の冒頭で当時の内閣制度が抱える問題点を要約しつつ記述するわけですが、ここには、現代の内閣が抱える同様な問題点が見てとれますね。
それは、内閣総理大臣が強力な指導力を発揮するというより、藩閥の均衡(内閣首班が薩長交代であった)に配慮し、各省の利益を調整する役回りを担っていたという記述が課題文中にあるからです。これは現在の内閣が連立内閣であること、又、仮に一党独裁であったとしても、党内の各派閥の勢力に配慮しなければならず、現在の内閣総理大臣の置かれている状況と酷似していると言えるでしょう。
現行憲法、あるいは法律上、内閣総理大臣は以下に示すような強大な権力を具有しているわけですが、実のところはどうなのでしょうか。今回の答案は、とくに憲法の観点から当該リーダーシップ発揮に対する内在的制約が存在することについて言及する必要があったと思われます。私が予想するに一般的にはアベノミクス、TPP、被災対策など個別具体的な論述を中心に答案を作成した受験生が多かったのではないかと思います。しかし、これでは、いただけません。憲法の規定から想定される首相の権限と、現実との溝を抽象的に記述できるかが鍵だと思います。リーダーシップというのは、何も政策の決断と権限の行使をいうのではありません。集団と対話し、調整する力もリーダーの資質として重要な要素であることに気付かねばなりません。もう一点、本問の内容とは無関係なのですが、赤本には余り書くことができない、少し先を見据えた学習の話をしておきましょう。受験生にとってはまだ6年から7年先の話でしようが、昨今の司法試験(新司法試験)が、公法系(憲法、行政法)の出来如何で合否が決まると巷間言われていることをご存知ですか。こういう状況であれば、憲法に明るい学生を大学側が欲すると言うのも一理あります。そして大学側が先取りで憲法の出題でその資質を試すというのもうなづけます。昨年が憲法の人権、今年が憲法の統治からの出題で、いずれも憲法が強く意識されていますからね。これは偶然でしょうか。さて来年はどういう出題になるか。折を見て又、役に立つ話をしたいと思います。

<憲法>
1. 他の国務大臣を任命し、任意に罷免すること(憲法第68条)。
2. 在任中の国務大臣に対する訴追に同意すること(憲法75条)。
3. 内閣を代表して議案を国会に提出すること(憲法72条)。
4. 内閣を代表して一般国務および外交関係について、国会に報告すること(憲法72条)。
5. 内閣を代表して行政各部を指揮監督すること(憲法72条)。

<内閣法>
1. 閣議を主宰すること(内閣法4条2項)。
2. 内閣総理大臣および主任の国務大臣の代理を指定すること(内閣法9条、10条)。
3. 行政各部の処分または命令を中止せしめ、内閣の処置を待つことができる(内閣法7条)。

<警察法、自衛隊法など>
1. 緊急事態の布告を発すること(警察法71条)。
2. 布告時における警察の統制(警察法72条)。
3. 自衛隊の最高指揮監督権を有する(自衛隊法7条)。
4. 武力攻撃事態またはその発生が切迫していると認められるに至った事態に際して、自衛隊の全部または一部に出動を命じる(自衛隊法76条、待機命令は77条)。
5. 武力攻撃事態等に至り、対処基本方針が定められたときは、内閣に設置される「武力攻撃事態対策本部」の対策本部長として、所要の権限を行う(武力攻撃事態平和、独立、安全確保法14条)。
6.気象庁長官から地震予知情報の報告を受けた場合において、地震防災応急対策を実施する緊急の必要があると認めるときは、閣議にかけて、地震災害に関する警戒宣言を発する(大規模地震対策特別措置法9条)


2012年度実施の論述力試験は、

元東京大学教授長尾龍一氏の著書

リヴァイアサン―近代国家の思想と歴史 」所収の
付 国家の未来」(242頁から252頁、一部略)

からの出題です。

出題の概要は課題文に描かれた
2つの「未来国家像」に
共通する考え方を簡潔に要約した上で、
その考え方に対する擁護と批判を
展開しなさいというものです。


課題文は各自入手した上で、
以下読み進めて頂きたいのですが、
ここに描かれている国家像は

「国家が人為的に人間性を改造する」
「国家による国民の人為的管理」

を志向するという点で共通しています。


すなわち、国民が国家と対立する行為に走らぬよう、
事前に「脳波を操作」(未来国家Ⅰ)する、
あるいは「遺伝子を操作」(未来国家Ⅱ)することで、
人間性を改造をするというものです。

マイクル・コーディー著
「クライム・ゼロ」を想起させる
SFの世界の話のようですが、
法学的観点からも実に興味深い内容です。


課題文に描かれている二つの未来国家像
(実際の長尾氏の論稿では、
「マルクス主義の未来社会」を含めた
三つの未来社会が描かれています)
の考えに対して擁護(支持)、
批判を加えるという点でも、法的思考力の
基礎を問うているといえるからです。


擁護、批判の展開の仕方の詳細は
5月末あるいは6月上旬発行の
慶応大学法学部の赤本の解答を
参照していただきたいのですが、
概略考えるヒントを図解しておくと、
およそ以下のようになるでしょう。

1擁護
 犯罪行為そのものの発生を事前に抑制可能

①司法行政に関わるコストの削減の実現

②形式的には犯罪者あるいは犯罪被害者を生まない社会の創出

2批判

①国家が個人の自己決定を否定することにつながる(憲法13条との関係)

②犯罪遺伝子なるものが果たして真に存在するか
 充分な検証がなされていない
(人間性に影響を与える環境要因からのアプローチ)

③現実の「法益侵害」発生以前の事前予防は妥当性を欠く

④当該国家政策は、「優性思想」と連繋しやすい

⑤①との関連で、当該国家政策実現のために、
 皮肉なことに国家の強制力を増大させる必要性が生じる


以上、2012年度慶応大学論述力に関する
雑感を示しました。
以後、慶応大学論述力に関連の
法哲学の基本に関わる話を
折をみてしていきたいと思います。


次回は峯村光郎「法哲学の課題と立場」(法学研究73巻3号)
を引用して「正義に反する法」へのアプローチについて、
お話をします。

powered by Quick Homepage Maker 4.81
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional